発芽玄米の摂取による腸内細菌叢の調整と脂質異常改善

水溶性食物繊維

脂質異常患者56名が発芽玄米または精白米を摂取する群に分かれ、3ヶ月間の食事介入による血中脂質及び腸内細菌叢への影響を分析した。発芽玄米はオートクレーブにより炊飯した。介入後、発芽玄米群は、精米群と比較して、中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロール等が統計的に有意に低い一方、HDLコレステロール等が統計的に有意に高かった。さらに、発芽玄米群は精米群よりも腸内細菌が豊富で、多様性、均一性が高かった。成分量の比較では、発芽玄米は、精米よりも、遊離アミノ酸(16種中10種)、GABA、難消化性デンプン、水溶性食物繊維、フラボノイド(13種中10種)の成分量が有意に高かった。発芽玄米は、腸内細菌叢を調整することで脂質異常を軽減することが示唆された。

Chuanying Ren, et al. Front Nutr. 2024; 11:1403200.

水溶性食物繊維と腸内の酪酸産生菌増加

水溶性食物繊維は、腸内細菌により短鎖脂肪酸(SCFAs)、特に酪酸が産生される際の基質となる。短鎖脂肪酸は腸の悪玉菌増加を抑制し蠕動運動を促進するほか、抗炎症作用やグルコース代謝改善作用等の健康効果がある。毎日の食事から摂取される水溶性食物繊維が腸内細菌叢に及ぼす影響を調べるため、弘前市の中高年の住民を対象としたコホート研究を実施した。交絡因子を調整し、低摂取量群260人(平均1.91g/日)、高摂取量群260人(3.30g/日)が選択された。1年後の追跡調査後に参加者を再分類し、低摂取量群と高摂取量群を再度比較した。その結果、水溶性食物繊維の摂取量が多い人は酪酸産生菌の相対的存在数が高かった。また、1年後も高摂取を維持したグループ(196人)では継続して酪酸産生菌の数が高かった。腸内に酪酸産生菌を十分に維持するには、毎日の食事から水溶性食物繊維を継続的に摂取することが必要である。

Satoshi Sato, et al. Microorganisms. 2022; 10(9):1813.

水溶性食物繊維の健康効果レビュー

食物繊維は健康効果が広く知られている栄養素であり、これまでの研究から腸内細菌叢を調節することにより胃腸の健康に大きな効果をもたらすことが示されている。さらに、作用機序の研究により、食物繊維の生理学的機能はその物理化学的特性に大きく依存しており、そのうちの1つが溶解度であると示された。不溶性食物繊維と比較して、可溶性食物繊維は腸内の繊維分解微生物によって容易に代謝され、機能性を有する代謝産物が産生される。本稿は、水溶性食物繊維の構造、特徴、生理機能について概説し、腸内細菌叢の調節を介して人間の健康に及ぼす影響、食事療法及び臨床介入との関連について検討した。

Zhi-Wei Guan, et al. Molecules. 2021; 26(22):6802.

にんじん由来ペクチン摂取による風邪症状の軽減

ペクチンなどの特定の食物繊維は、免疫細胞の反応と制御に重要な役割を果たす。にんじん由来のペクチンを構成するラムノガラクツロナン-I(cRG-I)を摂取することで、ライノウイルス-16(RV16)感染による急性呼吸器症状の重症度及び期間に与える影響を無作為化二重盲検比較試験により調べた。健常者177名がcRG-Iを0.3g/日または1.5g/日またはプラセボを摂取する3群に分かれ、8週間の介入後、146名が鼻腔内にRV16の感染を誘発された。0.3g/日群では、鼻上皮のインターフェロン誘発応答が早く、主要な抗ウイルス遺伝子EIF2AK2が誘導され、プラセボおよび1.5g/日群と比較して、ウイルスの除去が早く、症状の重症度の20%低下および持続期間の25%短縮が観察された。1.5g/日群での抗ウイルス応答、ウイルス除去、症状スコアは、プラセボ群と0.3g/日群の間にあり、過剰なインターフェロン応答を防ぐ負のフィードバックループが示唆された。cRG-Iの摂取は自然免疫応答と抗ウイルス応答を促進し、急性呼吸器症状を軽減した。

René Lutter, et al. Nutrients. 2021; 13(12):4395.

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