サフラン摂取と臨床酸化ストレスマーカー

サフラン

酸化ストレスマーカー(マロンジアルデヒド[MDA]、総抗酸化能[TAC]、総酸化ステータス[TOS]、グルタチオンペルオキシダーゼ[GPx]、スーパーオキシドジスムターゼ[SOD]、酸化促進/抗酸化バランス[PAB])に対するサフラン摂取の有効性を評価するため、無作為化臨床試験のシステマティックレビュー及びメタアナリシスを実施した。採用した16報にはサフラン群468名とコントロール群466名の被験者が含まれた。サフランの摂取により、MDA及びTOSレベルが統計的に有意に低下し、TAC及びGPxが統計的に有意に増加した。サブグループ解析により、サフラン摂取30mg/日以上、50歳未満の被験者、介入期間12週未満おいて、MDAレベルの有意な低下がみられた。全ての試験はイランで実施されていた。試験によって異なる疾病患者が被験者に含まれ、喫煙、身体活動、食事等の潜在的交絡因子が考慮されていなかった。

Ali Abedi, et al. Front Med (Lausanne). 2023; 10:1071514.

サフラン茶による閉経後女性の気分への効果

閉経はうつや不安等の心理的変化と関連しているとみられる。サフランのハーブティーが閉経後の女性の幸福感に与える影響を調べるため、イランで6週間の無作為化臨床試験を実施した。サフラン群36名(平均年齢53.75±3.87)はサフラン柱頭30mg/日のお茶300ml、コントロール群(同53.13±3.91)はぬるま湯を、それぞれ氷砂糖と一緒に摂取した。オックスフォード幸福感質問票による幸福度スコアを評価した。サフラン群の平均スコアは介入前42.93±8.54から介入終了後61.58±8.24に統計的に有意に増加し(p<0.001)、介入期間に応じて徐々に増加した。コントロール群では変化は殆どなかった(介入前43.11±6.81、介入終了後42.75±10.23、p=0.861)。サフラン群の介入後の平均幸福度スコアは、コントロール群と比較し統計的に有意に高かった(p<0.001)。

Hamed Delam, et al. BMC Complement Med Ther. 2023; 23(1):176.

サフランの成分クロシンの機能性と食品への応用

水溶性カロテノイドのクロシンは、サフランやクチナシの果実等に天然に含まれる生理活性成分である。抗酸化作用、抗炎症作用、抗うつ作用、脳関連の機能性等が期待され、様々な抽出法が開発されている。機能性食品としても、サフラン抽出物を取り入れたクッキー、パスタ、チーズ、シリアル、各種飲料について、クロシンのバイオアベイラビリティ、抗酸化能、微生物学的安定性、色、香り、味等が研究されている。

Anwar Ali, et al. Front Nutr. 2022; 9:1009807.

サフラン花弁抽出物のフラボノイドと抗菌特性

サフランの花弁は、大量に出る副産物であるが、多くの有益な特性が知られている。モロッコのセルギナ産サフラン花弁の含水エタノール抽出物に含まれるフェノール組成と抗菌特性を調べた。成分分析の結果、フラボノイド(ケンペロール、ケルセチン、イソラムネチン、ミリセチンの誘導体)に分類される計27種のフェノール化合物が検出された。最も豊富な化合物は、ケンペロール-ソホロシド異性体(20.82mg/g±0.152)、続いてケンペロール-ソホロシド-ヘキソシド(2.63mg/g±0.001)であった。食中毒を引き起こす可能性がある4つの細菌株に対して評価した結果、サフラン花弁の含水エタノール抽出物は、黄色ブドウ球菌とリステリア・モノセトゲネスに対して殺菌効果を、大腸菌とネズミチフス菌に静菌効果を示した。副産物であるサフラン花弁の抽出物は、天然抗菌成分の貴重な供給源となる可能性がある。

Nadia Naim, et al. Molecules. 2022; 28(1):186.

サフラン摂取による睡眠の質改善メタアナリシス

健康な成人または不眠症や2型糖尿病等の患者の睡眠の質改善に関して、サフラン摂取の有効性をメタアナリシスにより評価した。文献検索とスクリーニングの結果、サフランのサプリメント摂取を介入とする無作為化比較試験が対象となった。評価指標には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠重症度質問票(ISI)、回復睡眠質問票(RSQ)が含まれた。プラセボ群と比較して、サフラン群ではPSQI(平均差-2.14、95%CI:-2.86~-1.42、P<0.01)、ISI(-2.63、-3.70~-2.55、P<0.01)、RSQ(7.05、1.48~12.62、P=0.01)について顕著な効果が示された。サブグループ分析では、100mg/日のサフランサプリメントを摂取すると、睡眠の質に対してより安定した改善効果が得られることがわかった。様々な用量のサフランの有効性と長期的な安全性を確認するには、さらなる研究が必要である。

Jinrong Lian, et al. Sleep Med. 2022; 92:24-33.

サフラン摂取によるメンタルヘルスへの効果

サフランのサプリメント摂取による精神的な健康への効果を調べた臨床試験について、システマティックレビューを実施した。薬物治療の補助療法としての介入も含め、薬物療法単独またはプラセボと比較した無作為化試験を対象とし、23件の研究が採用された。メタ分析の結果、サフランはプラセボと比較し、うつ症状(ヘッジズの効果量g=0.99、95%C: 0.61–1.37、14試験、被験者716名、P<0.001)、不安症状(g=0.95、95%CI: 0.27–1.63、6試験、被験者375名、P<0.006)に対して大きなプラスの効果量を示した。また、サフランは抑うつ症状に対する抗うつ薬の補助療法として摂取した場合にも大きなプラスの効果量を示した(g=1.23、95%CI: 0.13–2.33、4試験、被験者144名、P=0.028)。出版バイアスや地域的多様性の欠如が認められ、作用機序、作用成分、用量、長期的安全性に関する解明も含め、さらなる臨床試験が必要である。

Wolfgang Marx, et al. Nutr Rev. 2019; 77(8):557–571,

大分県竹田市のサフラン栽培法の歴史と普及

大分県竹田市は国内のサフラン生産の約8割を占めるとされる産地である。スペインやイラン等の主要生産国では屋外で栽培・収穫されるのに対し、竹田サフラン栽培法は屋内でサフランを開花させる方法であり、1910年頃に竹田市で天候による花への影響を抑えて高品質のサフランを生産するために考案された。日本におけるサフラン栽培法に関する文献調査の結果、1940年以前は神奈川県、兵庫県、佐賀県、広島県が露地栽培による主要産地であったが、球茎の腐敗病により栽培量が減少した。一方、竹田サフラン栽培法は考案から30年以上も文献に公表されていなかったとみられる。竹田市での現地調査と聞き取りにより、考案者の子孫が種苗の普及に尽力したこと、経験豊かな農家が組合を結成し竹田サフラン栽培法の奨励・向上を図ってきたことが明らかになった。国産の高品質サフランを安定的に供給するため、竹田サフラン栽培法を記録し、継承していくことが必要である。

髙浦(島田)佳代子,髙橋京子,渡部親雄. 薬史学雑誌. 2019; 54(1):31-38.

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