血中カロテノイドと認知機能の関係

カロテノイド

血中カロテノイド濃度と認知症及び軽度認知障害(MCI)リスクの関係について、システマティックレビュー及びメタアナリシスを実施し、認知症1,422人、MCI 435人、対照群4,753人を含む23件の観察研究を評価した。対照群と比較して、認知症患者の血中のリコピン(標準化平均差SMD: -0.521; 95%CI: -0.741, -0.301)、α-カロテン(-0.489; -0.697, -0.281)、β-カロテン(-0.476; -0.784, -0.168)、ルテイン(-0.516; -0.753, -0.279)、ゼアキサンチン(-0.571; -0.910, -0.232)、β-クリプトキサンチン(-0.617; -0.953, -0.281)それぞれの濃度は低かった。研究全体で異質性は高かったものの、認知症患者の血中カロテノイド濃度は、対照群よりも統計的に有意に低値であった。血中カロテノイド濃度とMCIの関係は明確ではなかった。血中カロテノイド濃度の低下は認知症とMCIの危険因子である可能性が示唆された。

Lin Wang, et al. BMC Geriatr. 2023; 23(1):195.

皮膚測定などによる野菜果物摂取量評価と血漿カロテノイドの関係

食事由来の血漿カロテノイドは、果物や野菜の摂取量のマーカーとして広く使用されている。8週間の観察研究により、食事によるカロテノイド摂取量を評価する最新の非侵襲的方法(反射光分光法またはラマン分光法による皮膚測定)及びアプリベースの食事記録(ASDR)を、血液検査等の従来の方法と比較した。健康な50~65歳の21人が参加した。ASDRを用いたカロテノイド豊富な果物と野菜の摂取記録は、血漿中のα-カロテン(r=0.74、p<0.0001)、β-カロテン(r=0.71、p<0.0001)、総カロテノイド(r=0.65、p<0.0001)と相関関係を示し、ルテイン/ゼアキサンチン及びβ-クリプトキサンチンとは弱い相関(いずれもr=0.34、p<0.05)を示した。皮膚測定は、血漿中の総カロテノイド(反射光分光法r=0.81とラマン分光法r=0.72、いずれもp<0.0001)、α-カロテン(r=0.75と0.62、p<0.0001)、およびβ-カロテン(r=0.79と0.71、p<0.0001)と相関し、ルテイン/ゼアキサンチンと中程度(いずれもr=0.51、p<0.0001)の相関、β-クリプトキサンチンと弱い(r=0.40と0.31、p<0.05)相関を示した。血漿リコピンとは相関関係がなかった。皮膚測定及びASDR食事記録は、個人の果物や野菜の摂取量を推定・評価する便利なツールである。

Thorsten Henning, et al. Nutrients. 2023; 15(7):1665.

カロテノイドの摂取とうつ予防

多くの研究がカロテノイドの抗酸化活性がうつを予防する可能性を示唆しているが、一部の研究はそれとは反する結論を出している。本研究は、カロテノイドの摂取とうつ症状との関係を検証するため、観察研究のメタアナリシスを実施した。横断研究8件、症例対照研究3件、大規模コホート研究1件を評価した。プール解析により、総カロテノイド(OR=0.61, 95%CI [0.53, 0.71], p<0.01)、β-カロテン(OR=0.61, 95%CI [0.52, 0.70], p<0.01)、α-カロテン(OR=0.71, 95%CI [0.60, 0.83], p<0.01)、リコピン(OR=0.71, 95%CI [0.55, 0.90], p<0.01)、ルテイン/コーンキサンチン(OR=0.53, 95%CI [0.43, 0.66], p<0.01)の摂取は対照群と比較してうつ症状を有するケースが統計的に有意に低かったが、β-クリプトキサンチンは統計的有意に関係しなかった。出版バイアスと異質性はみられなかった。因果関係やそのメカニズムに関してさらなる研究が必要であるが、カロテノイドの摂取がうつのリスク軽減に役立つ可能性を示唆した。

Qiong Yu, et al. Antioxidants (Basel). 2022; 11(11):2205.

緑黄色野菜摂取と心血管疾患発症マーカー

中年男性を対象とした食事教育介入研究における野菜果実摂取量、血清カロテノイド濃度、心血管疾患発症マーカーとされるマロンジアルデヒド修飾低密度リポ蛋白(MDA-LDL)の関連を検討した。緑黄色野菜を含む野菜総摂取量は6週間の介入後300g程度に増加し、α-カロテン及びβ-カロテンの摂取量と血清α-カロテン及び血清β-カロテン濃度も増加した(それぞれp=0.009及びp<0.001、p=0.001及びp<0.001)が、いずれもMDA-LDLとの関連はみとめられなかった。しかし、介入後の緑黄色野菜摂取量増はMDA-LDLと負の相関傾向を示した(p=0.051)。果実摂取量は介入前後で変化しなかった。既報研究と合わせ、食品の組み合わせに関する食事教育と緑黄色野菜摂取がMDA-LDLを低下させる可能性が示唆された。

Satomi HIRAI, et al. 日本家政学会誌. 2022; 73(1):21-30.

カロテノイド摂取とフレイル予防

成人集団におけるカロテノイド摂取とフレイル症候群との関連性を評価するため、システマティックレビューを実施した。11報の観察研究が適格基準を満たし、5つカロテノイド(α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、リコピン、β-クリプトキサンチン)が含まれた。食事摂取量または血清濃度のいずれかにより計測されたカロテノイド量が高いほど、フレイルの確率が顕著に低下することが全ての研究に一貫して示された。各研究の質は中(27%)から高(73%)と評価した。果物や野菜の摂取量を増やすこと、カロテノイドを生物学的マーカーとしてモニタリングすることは、フレイルの予防管理の一部となることが示唆された。

Roberta Zupo, et al. Biomedicines. 2022; 10(3):632.

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